K-POPの基礎知識⑧ K-POPアイドルの基礎知識 練習生制度って何? 魔の7年契約とは? アイドルにはどうやったらなれるの? その仕組みを一挙解説
K-POP界は、毎年アイドルグループが100組程度デビューする世界。その中で売れるのはほんの一握り。大人気となり多くのファンに愛されても、デビューから7年で解散やメンバーの脱退となるグループも多く、ファンには「魔の7年」と呼ばれている。
それでは一体、K-POPアーティストらはどうやってアイドルになり、どうやってアイドルを辞めていくのか。練習生制度、精算制度、7年後の道…「K-POPアイドルの一生」にフォーカスして、その制度を詳しく解説しよう。
デビューするまで
K-POPアイドルになるには、韓国の芸能事務所の練習生になることが一般的。サバイバル番組で選出されれば即デビューも可能だが、一度も事務所に所属したことがない練習生がデビュー組に入った前例はあまりない。
練習生になるには
芸能事務所のオーディションは公開と非公開がある。公開オーディションは事務所の公式サイトなどで告知されている。最近では、韓国まで行かずとも、日本でオーディションを開催している韓国の芸能事務所も多い。
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非公開オーディションは、ダンススクールに通う生徒などを対象に行っている。RIIZEのショウタロウはEXPG STUDIO(EXILEらが所属するLDHが開業した有名ダンススクール)に通っており、その縁でSMエンターテインメントからオーディションを依頼されたそう。
他に、スカウトという道もある。TWICE ミナは日本でスカウトされてJYPエンターテインメントに入社したのは有名な話だが、スカウトされてもまずはオーディションを受けることが一般的だ。また、最近ではSNSを通してスカウトする方法も活発であり、aespaのカリナが有名。
練習生制度
韓国の芸能事務所のほとんどは、「練習生」という制度を採用している。事務所のオーディションに合格すると、その事務所の「練習生」になることができる。レッスンは無料で、宿舎も提供されるが、給料は支給されない。練習生の多くは中高生のため、学校生活と並行して練習生活を送っている。そのため宿舎には入らず自宅から事務所まで通っている練習生もいる。しかしその時間さえ惜しんで、練習に専念するため学校を辞める練習生もいるほど。
練習生はボーカルレッスン・ダンスレッスン・語学のレッスンが課される。また演技のレッスンを課している事務所も多い。さらに、マナーやお笑い、姿勢のレッスンなどを提供している事務所もあるそう。
月末評価
芸能事務所の練習生になれれば、そのうちデビューできるというわけではない。練習生には毎月「月末評価」というものが課され、トレーナー陣はもちろん経営陣や先輩アイドルらが評価を下す。その際に、体重チェックを行う事務所もあるそうだ。
「月末評価」では、練習生は個人曲とダンスを準備し、スタッフの前で発表しなければならない。月末評価とはつまり、練習生たちの実力を逐一チェックするための大事な試験である。そこで実力がないと判断されると、戦力外通告をされ事務所を退社することになる。もちろん、自ら退社する場合も少なくない。
逆に評価の良い練習生ともなれば、バックダンサーなどで活躍する「公開練習生」となることも。公開練習生は、SMエンターテインメントであれば「SMROOKIES」と呼ばれており、練習生の中でも最もデビューに近いメンバーである。実際に「SMROOKIES」としてお披露目された後にデビューしたアイドルは非常に多い。
▼SMROOKIESとしてお披露目されたウンソク(現在RIIZEのメンバー)
宿舎での共同生活
韓国ではアイドルのほとんど宿舎で共同生活を送っている。理由は様々あり、自宅から遠方の練習生が多いため、共同生活をすることで仲を深めるため、事務所やマネージャーがメンバーのスケジュールを管理をしやすいため、などがあげられる。
宿舎では、1人ひとりに部屋が与えられるというわけでもなく、相部屋を使っているアイドルも少なくない。IVEは1つの宿舎で6人が共同生活を送っていたが、1人で過ごすことを好むユジン、ウォニョン、リズのみに1人部屋が与えられ、それ以外のメンバーたちは広い部屋をパーテーションで仕切って3人で使っていたそう。現在は新宿舎に引っ越して個人部屋が与えられたようだ。
デビューして人気を得て給料が支払われるようになると、宿舎を出てひとり暮らしを始めたり、実家が近い場合は自宅から通勤するアイドルも多くいる。BTS(防弾少年団)はメンバー全員が宿舎を出ていることを明かしている。しかし、ベテランとなっても宿舎に残るアイドルも少なくない。
オーディション番組
練習生にならずとも一発デビューできる方法が、オーディション番組で選出されることである。『BOYS PLANET』のファイナリストまで上り詰めたユン・ジョンウは、どこの事務所にも所属しない“個人練習生”だった。しかし彼はボーイズグループBLACKLEVELのメンバーとして活躍していた過去がある。
Kep1erのヒュニンバヒエも個人練習生ではないかと話題になったが、実際はPlay Mエンターテインメントの練習生だったことが明らかになっている。一度も事務所に所属しないまま個人でデビューというのはかなり難しそうだ。
デビュー後
K-POPアイドルの練習生期間は約2~4年と言われている。しかし中には10年以上もの間、練習生としてトレーニングを積んだアイドルもいる。例えば、BilllieのムンスアはMYSTIC STORYからデビューする前はYGエンターテインメントで練習生をしており、トータルで12年にも及ぶそう。逆に、その高い実力ゆえに練習生期間が短いアイドルもいる。現在RIIZEのメンバーであるショウタロウは、練習生期間はたったの約1ヶ月でNCTとしてデビューした。
そうした苦労の末にデビューをつかみ、人気とキャリアを得ることができても7年後には解散・脱退となるアイドルも多い。デビュー後のアイドルはどういうシステムで活動しているのか? 簡単に説明しよう。
清算制度
デビューしてもK-POPアイドルはすぐに給料を受け取れるわけではない。韓国の芸能事務所の多くは「精算制度」があり、デビューにかかった費用を精算するまで給料が発生しない。つまり、練習生期間に事務所がメンバーたちに投資した費用(宿舎での生活費、トレーニング費など)が、デビュー後の売り上げから返済されていくシステムで、精算が済んで初めてしっかりした給料が払われるようになる。返済する金額は事務所によって大きく違ってくるが、1人あたり平均1~2億ウォン(日本円で1~2千万円程度)だと言われている。多くのアイドルがデビュー後も宿舎で共同生活を送るのは、しばらく給料が受け取れないためである。
NewJeansがデビュー後たったの2か月で精算できた際は大きな話題となった。ADOR代表のミン・ヒジンは「とてもありがたいことに、音源と音盤の販売が上手くいったので、それで精算をしてあげることができました」と明かした。
現在、大手事務所では練習生時代にまで遡って精算することはないそう。YGエンターテインメントは手厚い「福祉制度」を練習生にも与えており、勉強面でのサポートも無償だそう。しかし練習生に投資する余裕のない中小事務所やレーベルは、今も精算制度がある。
魔の7年と契約更新
K-POPアイドルを長く応援していると「再契約」という言葉を聞いたことがあるはずだ。通常、K-POPアイドルらはデビュー時に7年間の専属契約を事務所と締結する。以前は10年以上にわたる長期契約だったが、2009年に東方神起のメンバーだったジェジュン、ジュンス、ユチョンの3人が、13年(兵役期間を入れると15年)という長期契約に対し、所属事務所SMエンターテインメントに対して専属契約効力停止の訴えを起こした。これにより、同年、公正取引委員会は「大衆文化芸術人 標準専属契約書」で最長契約年数を7年と制定。よって、それ以前に契約を締結したアイドル以外は、7年間の専属契約を結んでいることがほとんどだ。
そのため、どれだけ人気を博したグループであってもデビュー7年で解散やメンバーの脱退が多く見られ、K-POPファンからは「魔の7年」「7年目のジンクス」と言われている。2023年の今年は、2016年にデビューしたグループが7年目を迎えた。PENTAGONは一部のメンバーらが契約満了に伴いCUBEエンターテインメントを退社し、日本人メンバーのユウトは日本の事務所RINKエンターテインメントへの移籍が報じられた。メンバー全員が早期再契約をして注目されたSF9も、ロウンが俳優業に専念するためSF9からの離脱を発表し、FNCエンターテインメントの俳優部門に移籍した。MOMOLANDは残念ながら、メンバー全員が所属事務所であるMLDエンターテインメントとの専属契約を満了し、解散することが決まった。
もちろん、メンバー全員が同じ事務所との再契約を果たしたグループもある。しかしそれを果たしたのは、これまでにSEVENTEEN、TWICE、BTS(防弾少年団)、2AM、そして今年7年目を迎えたBLACKPINKの5組だけ。BLACKPINKの再契約は難航していると見られていたため、YGエンターテインメントと再契約し大きなニュースとなった。
神話(SHINHWA)やGOT7のように事務所をメンバー全員で移籍して継続しているパターンもあるが、それも2組だけだ。MAMAMOOはフィインとファサがRBWを退社し2023年までグループ活動を継続することを発表している。いかに「7年目」がファンに恐れられているかがわかるだろう。
期間限定グループ
そもそも契約期間が数年と決まっているグループもある。サバイバルオーディション番組から結成されたグループのほとんどは、短期の期間限定グループとなっている。
『PRODUCE 101』から誕生したI.O.Iは2016年5月4日にデビューし、わずか8ヶ月後の2017年1月31日に解散した。『PRODUCE 101 シーズン2』から誕生したWanna Oneは2017年9月27日にデビューし、約1年5ヶ月後の2019年1月27日に解散した。『PRODUCE 48』から誕生したIZ*ONEも、2018年10月29日にデビューしたが約2年半後の2021年4月29日に活動期間が満了し、活動終了となった。
そのため、現在活動中のKep1erは『GIRLS PLANET 999:少女祭典』の期間限定グループであるため、デビューから2年6ヶ月の期間限定での活動を予定している。2022年1月3日にデビューしているため予定通りであれば2024年7月までとなる。同じく『BOYS PLANET』から誕生したZEROBASEONEも2年6ヶ月の期間限定での活動を予定している。2023年7月10日デビューのため、2026年1月までとなる。
脱退・解散後のアイドル
では、グループでの活動終了や解散を迎えたアイドルはいったいどうなるのか? また、グループを脱退したメンバーのその後のキャリアはどうなるのか? いくつかの事例を挙げて、「アイドルのその後」を追いかけてみよう。
ソロで再デビュー
ソロシンガーとして成功している1人といえばカンダニエルだろう。彼はWanna One出身なのは有名だ。他にもI.O.I出身のチョン・ソミ、IZ*ONE出身のチョ・ユリやチョン・ソミらがソロで活躍しており、多くのアーティストがソロでも活躍できるほどの人気を博している。
Block BのZICOはソロアーティストとして活躍すると同時に、HYBE傘下のKOZエンターテインメントの代表を務めており、2023年にはBOYNEXTDOORをデビューさせた。
別のグループで再デビュー
IZ*ONE活動終了後、ウォニョンとユジンはIVEのメンバーとして、宮脇咲良とキム・チェウォンはLE SSERAFIMとして活躍していることは有名だ。
X1は投票操作問題で活動終了したあと、多くのメンバーらが別々のグループで再デビューしている。キム・ヨハンはWEiのメンバーとして、ハン・スンウはVICTONのメンバーとして、ソン・ヒョンジュンとカン・ミニはCRAVITYのメンバーとして、ソン・ドンピョはMIRAE(未来少年)のメンバーとして、イ・ハンギョルはBAE173のメンバーとして、チャ・ジュノはDRIPPINのメンバーとして、イ・ウンサンはYOUNITEのメンバーとして活動中だ。
俳優・女優の道へ
『イ・ドゥナ!』が大ヒット中の女優ペ・スジは、JYPエンターテインメント所属のmiss Aというガールズグループに在籍していた。『花朗』の俳優パク・ヒョンシクも、実はZE:Aというボーイズグループのメンバーである。ZE:Aは現在グループ活動はしていないものの解散は否定している。
また、fromis_9のメンバーだったギュリは女優の道に専念するためグループを脱退したことを明かしている。
元々、練習生の頃から演技のレッスンを取り入れている事務所も多いため、ASTROのチャ・ウヌやEXOのD.O.(ド・ギョンス)、2PMのジュノ、BTOBのソンジェなど、演技ドルとして俳優とグループを両立しているアイドルも多い。
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