SHINee ジョンヒョンがこの世を去ってから4年が過ぎた。
2008年に韓国デビューを果たし、SHINeeのメインボーカルとして韓国芸能界随一の歌唱力を誇ったジョンヒョン。セクシーで力強い歌声が印象的で「K-POP界で一番歌が上手いアイドル」と称されるほどだった。力強い歌声とたくましい体つきで魅せる迫力あるパフォーマンスで知られる一方、彼はまたとてもあたたかい心の持ち主で、優しく繊細な感性を持った人物だったことはファンの間ではよく知られている。
よく笑い、冗談を言うことが大好きで、子犬のようなかわいらしい表情でメンバーたちと交流する姿でファンを喜ばせた。
感極まって涙を流すことも多く、感性豊かで情が深い、あたたかい性格は、今も多くの人から愛されている。
SHINee ジョンヒョン
SHINeeとしての活動では、コンテンポラリーな楽曲とダンスで、K-POP界の新たな歴史をカムバックの度に更新した。
2013年の年末に行われた授賞式「2013 Melon Music Awards」では、SHINeeが大賞を受賞。デビュー後、6年を経ての悲願の受賞にメンバー全員がステージ上で号泣する感動的なシーンは、ファンの間で今も語り継がれている。特にジョンヒョンは嗚咽を漏らすほどで、その姿に涙を誘われる視聴者も多かった。
韓国国内での活動のみならず、日本を中心に海外活動も行っていたSHINeeは、ワールドツアーや日本ツアーを多く行った。日本では地方の小さなホールツアーからアリーナツアー、ついには念願の東京ドーム公演、ドームツアーまで実現させ、ファンたちを喜ばせた。
個人活動
ジョンヒョン個人としては、2014年から2017年4月まで、MBC FM4Uで「青い夜、ジョンヒョンです」というラジオ番組を持ち、DJを務めた。たぐいまれなトークセンス、洗練されたワードセンスを持つ彼は、念願と語っていたラジオ番組を大いに盛り上げた。2017年1月には、同番組に「君の名は。」の監督として知られる新海誠がゲスト出演。当時韓国では「君の名は。」が大流行していたため、この豪華なゲストの登場とジョンヒョンと新海誠の親交が韓国で大きな話題となった。
韓国3日目。昨晩のラジオ収録は、SHINeeのジョンヒョン「青い夜」でした(MBCラジオ9日夜12時半から放送予定)。ジョンヒョン、とても素敵な方だったなあ。日本語堪能で、「『君の名は。』が一生の一本になりました」と言ってくれました。スタッフも皆「彼のファンになった!」と笑。 pic.twitter.com/PtW79SuEvx
— 新海誠 (@shinkaimakoto) January 6, 2017
番組の中では、彼のあたたかい人格を表すエピソードが多く語られた。ラジオ番組以外でも、彼の価値観を表す名言は数多く残された。その言葉たちは今も人々の心を癒し、勇気づけている。
・「理解するよりも認めること」
・「「皆そうやって生きてるの。あなただけが大変なわけじゃない。」僕はこれが世界で一番悪い慰め方だと思います。苦しんでいる人、ゆううつな人、困難な立場にいる人、疲れている人に、「そんなことを考える勇気で他のことをしなよ。苦しんで疲れて良くないことを考えるエネルギーでやるべきことを早く処理したほうがいい」と言うのは、正直その人もわかっていることだと思う。でもそれができないから。目に見える体の傷と心の傷は違う」
・「夢も思い出せない深い眠りにつけますように」
また、作詞・作曲家、また小説作家としても才能を発揮していた彼は、SHINeeの曲を制作する他、IU、EXO、イ・ハイ等、数々のアーティストに楽曲を提供し、そのたぐいまれな感性が発揮された楽曲の数々は大ヒットを収めた。SHINeeの大ヒット曲「View」は、ジョンヒョンが作詞した曲だ。2015年には「BASE」というアルバムを発表し、ソロデビューを果たす。クオリティが高くオリジナリティあふれる楽曲の数々はK-POPファン以外にも好評で、このアルバムの発売をきっかけに、「アーティスト・キムジョンヒョン」としての姿が広く知られるようになった。
SHINee 「View」
ソロデビュー曲「Crazy (Guilty Pleasure)」
彼が執筆した小説「山荷葉(サンカヨウ)」は、彼の感性が濃縮された作品となっており、彼はその中でもっとも好きな一節として、「彼はこんなに凶暴な憂うつ感に出会うとは夢にも想像できなかった」という文章を挙げていた。もしかすると、これは彼が実際に抱えていた心の苦痛を表現したものだったのかもしれない。
急逝
2017年12月18日、ある寒い冬の日だった。ジョンヒョンはとつぜんこの世を去った。彼の悲報に、韓国芸能界を始め世界中が悲しみに包まれた。彼の死後、彼の友人であったバンド「Dear Cloud」メンバーのナインが彼から託されたという遺書を公開した。
遺書の内容から、彼は芸能人としてのキム・ジョンヒョンとしての苦悩を抱えていたことが明らかに。元々繊細な感性を持っていたジョンヒョンは生前、体にうつ病を象徴する「黒い犬」のタトゥーを残していたことから、華やかな経歴とは裏腹に、深刻なうつ病を抱えていたのではという推測がされた。
ファンはもちろん、ジョンヒョンの友人や彼を尊敬するアーティストたちは、才能あふれ人間性もすばらしかった彼を失ったことに大きなショックを受けた。今も心に大きな傷を残している人も少なくない。
しかし、そんな彼を忘れないように、とジョンヒョンが制作した曲をカバーするアイドルが後を絶たない。
「Breath(ため息)」をカバーするアイドルたち
「Breath(ため息)」は、ジョンヒョンが制作し、歌手イ・ハイに提供した曲。人の痛みに寄り添い、聞く人の心を慰める優しい歌詞が印象的なバラード曲だ。「あなたのため息 その深さをわかってあげることはできないけれど 大丈夫 私が抱きしめてあげる」という歌詞が印象的で、その歌詞に心を救われる人も多い。
・BTS(防弾少年団) ジョングク
— 방탄소년단 (@BTS_twt) January 16, 2018
・NU’EST (Wanna One出身) ファン・ミニョン
・SUPER JUNIOR キュヒョン
・VICTON (X1出身) ハン・スンウ
・SHINee ジョンヒョン
・イ・ハイ(原曲)
「End of a day(一日の終わり)」をカバーするアイドルたち
「End of a day(一日の終わり)」は、疲れた1日の終わりを慰める癒やしの曲だ。「お疲れ様でした 本当にご苦労様でした あなたは私の誇りです」というあたたかい一節は、聞く人の心を癒す。
・Golden Child ジュチャン
・Crush
・CIX スンフン
・SHINee ジョンヒョン(原曲)
日本カルチャーを愛するジョンヒョン
また、ジョンヒョンは日本のカルチャーを愛し、それをよく表現した。
「NARUTO、ワンピース、BLEACHが日本アニメの登竜門だ」と語るほど日本アニメをよく知る彼は、「エヴァンゲリオン」や「カウボーイビバップ」、ジブリ作品が特に好きだと語っていた。
また、新海誠監督の「君の名は。」を公開初日に観に行き、「3回泣いた」と公言していた。
K-POPファンの間でよく知られるSMエンターテインメントのハロウィンパーティーでは、「NARUTO」や「犬夜叉」のコスプレを披露し、そのハイクオリティすぎるコスプレが話題を呼んだ。
彼はJ-POPにも精通しており、日本のコンサートではJ-POPを披露することもあった。彼が選ぶ曲は、繊細で優しい彼らしくどれも感動的な歌詞が印象的だ。歌詞をしっかりと理解しながら歌い上げているようであるその姿に涙するファンも多かった。
・Mr.Children 「しるし」
・平井堅 「瞳を閉じて」
・平井堅 「僕は君に恋をする」
その豊かな才能と人柄から、亡くなった後もなお愛を受け続けるジョンヒョン。これからも彼は人々の心の中に生き続け、K-POP界の伝説として語り継がれていくだろう。
彼の命日である12月18日は、彼を知る人にとっては悲しい日である。しかし、彼を思い出すのであれば、憂鬱な彼の姿だけでなく、笑顔が素敵でかわいらしく、才能にあふれ音楽を心から愛した彼の輝かしい姿も思い出してほしい。