元f(x) ソルリの「真の性格」が、ドキュメンタリー作家チョン・ユンソクによって明かされた。
ソルリ(本名:チェ・ジンリ)は、2009年にSMエンターテインメントのガールズグループf(x)のメンバーとして音楽界にデビュー。2015年にグループを脱退した後は、女優兼ソロアーティストとして活躍した。しかし2019年10月、彼女はわずか25歳という若さでこの世を去った。
そんな彼女が最後に応えたインタビューをもとに作成された長編ドキュメンタリー『Dear Jinri』と主演を務めた短編映画『4:CLEAN ISLAND(原題)』が、今年10月4日から14日にかけて開催された第28回釜山国際映画祭にて、短編映画プロジェクト『Persona:Sulli』として初上映された。上映後、『Dear Jinri』の監督を務めたチョン・ユンソクは観客との対話セッションに参加。ソルリの舞台裏の人物像について語った。
BIFF2023 Trailer l 진리에게 Dear Jinri l 와이드 앵글 – 다큐멘터리 쇼케이스
ソルリは2013年ごろから、ステージ上での態度に対する批判が多く上がるようになった。(後にこの態度は精神的なプレッシャーが原因だったと告白している)また、プライベートでは自由奔放な姿を公開することが多く、それが原因で心無い誹謗中傷を受けてきた。これらの言動や世論から、「トラブルメーカー」といった烙印を押されてしまったソルリだが、彼女の真の姿は世間が考えていたものとはかなり異なっていたようだ。
チョン監督いわく、ソルリは世間の認識とは対照的に、包容力のある優しい女性だったという。傾聴力も高く、「俳優として積極的な主張を出すよりも、監督の考えをたくさん聞いてくれる人だった」という。チョン監督は共に仕事をしながら感じたソルリの真の性格について「彼女は常に相手の考えを受け入れようという態度を見せた人だ。彼女のこの一面は、一般の人々が知っているソルリのイメージとは対照的だと感じた」と振り返った。
また、チョン監督はソルリに対して大衆が持っていたイメージが実際の性格と大きく異なる理由について以下のように考察している。
「私たちが接する芸能、TVフォーマットでは、10時間を撮影しても1時間分が表示されるので、主人公の沈黙は大部分が編集されて表示される。人々にはその部分が削除されて表示されるので、主人公が持っている重要なアイデンティティがうまく伝わらない」
「そのような観点から大衆が見たとき、彼女の行動は過激に見えることもある。それで誤解や論争が起こる可能性があると思った」
真意が伝わらないまま行動の内容だけが独り歩きしてしまった結果、彼女は世間から大きな誤解を受けることになってしまったのだ。
ソルリの悲劇的な死を受け、世間ではネットでの誹謗中傷に関する議論が巻き起こった。韓国大統領府のウェブサイトには、ネットいじめに対する厳罰化、コメント投稿やアカウント作成時の実名制の強化を求める7件の請願書が掲載された。世論を受け、韓国の大手ポータルサイトでは芸能人たちを誹謗中傷から守るため、芸能記事のコメント欄が閉鎖されるようになった。
その後、韓国の政界もこの問題に注目し始め、インターネットユーザーがオンラインでコメントを投稿する際はID全体とIPアドレスを公開すること、当事者以外の第三者も誹謗中傷コメントの削除要求を可能にすることを提案した「ソルリ法」こと「情報通信網法改正案」が発議された。また、情報通信ネットワーク利用促進及び情報保護法の一部を改正する法律案も提出され、情報通信サービス事業者に対しプラットフォームからの誹謗中傷コメントの削除義務が課せられるようになった。しかし、残念ながら「ソルリ法」は本会議を通過することができず、最終的に審議から外されてしまった。
誤解や偏見で人を追い詰め、死へと追いやってしまうような悲劇は、二度と繰り返されてはいけない。ソルリの死から我々が学ぶべきことは何か、今一度熟考したい。