INIが新人とは思えないハイレベルなステージで観客を圧倒した。
5月15日、INIは「KCON 2022 Premiere」に出演。デビュー曲『Rocketeer』を含むオリジナル曲を4曲、そしてK-POPアーティストのカバー曲を2曲、合わせて全6曲のパフォーマンスを披露した。
今回はこの6曲のパフォーマンスについてレポートさせていただく。彼らの情熱と安定感が見られた最高のステージを余すところなくお伝えしていきたい。
Rocketeer
彼らが最初にパフォーマンスしたのは大人気のデビュー曲『Rocketeer』だ。この楽曲はINIの持つ莫大なエネルギーが感じられるパワフルな楽曲。音楽に対する情熱を体で表現するその姿からは新人らしからぬ力強さが感じられる。
このパフォーマンスではINIのダンスパフォーマンスの質の高さに改めて感心させられた。イントロ部分からキレのある動きを見せていたが、とくに印象的だったのはサビパートのうちの「つきぬけて」という歌詞の部分。このパートは頭を激しく動かすダンスが特徴だが、どのメンバーも手加減なしにブンブンと頭を振っている姿が衝撃的だった。また、終盤のダンスパートも勢いがすごかった。観客に自分たちの“全力”を見せようとする、彼らの強い思いが感じられた瞬間だった。
DILEMMA
続く『DILEMMA』でも安定したダンスパフォーマンスを見せた彼ら。このステージではダンスに加え、ボーカル面の強さも見せた。
ダンス面でとくに目を引いたのは西洸人だ。元ダンサーということで、ダンススキルや表現力が高い彼だが、今回のステージではそのような技術に加え、ステージを楽しもうとする姿が印象的だった。ファンを楽しませるためには、エンターテイナーたち本人が楽しくなければならない。この重要なポイントを意識的か、無意識的か、彼はしっかり理解しているように思えた。
もちろん、技術面においても目を引くポイントは多かった。西は動きや表情によって“ライブ感”を出すのが非常に上手い。とくに自分のパートでは、よりダイナミックな動きと鋭い表情で会場を掌握しようとする覇気が伝わってくる。
驚いたのは、彼が最後までこのパワフルさを維持できていたところだ。前曲『Rocketeer』から、とてつもない激しさを見せていた彼。この曲でも前半からダイナミックな踊りを続けていたため、後半は少しペースを下げてくるかもしれない、と予想していたのだが、彼は最後までパワー全開で踊り続けた。これは『Rocketeer』『DILEMMA』のみならず、他の楽曲においても言えることだ。会場を盛り上げたい、ステージを掌握したいという強い思いについて行けるだけの体力を持っていることもまた、彼の強みだろう。
もう1人、この楽曲のダンスパフォーマンスで目を引いたのは松田迅だ。彼はキレのある力強い動きがとても印象的だった。王子様のような華やかなで儚げなビジュアルを持つ彼だが、そんな外貌とは裏腹にダンスはかなり激しいスタイルだ。全身を大きく使いながらダイナミックに踊っていた彼だが、緩急のつけかたもすばらしかった。パワフルながらも洗練されたダンスに思わず見とれてしまった。
ボーカル面においては、髙塚大夢の歌声がとても印象に残っている。髙塚といえば伸びやかな高音を得意とするメンバー。後半では超高音のフェイクをみごとにこなし、観客を驚かせた。ダンスを踊りながらとは思えないほどの圧倒的な声量と安定感に、ライターも思わず感嘆のため息をついてしまった。
CALL 119
3曲目に披露したのは、新曲『CALL 119』。こちらもパワフルなダンスが魅力の楽曲だ。このパフォーマンスでは、メンバーたちの楽しそうな表情が印象的だった。
グループで王子様を担当している後藤威尊。そのキャッチネーム通り、彼はキラキラと輝く姿を見せてくれた。激しいダンスパフォーマンスであるにもかかわらず、彼の表情からは終始余裕が感じられた。ステージを心から楽しむ姿を見て、こちらまでも楽しくなってしまった。
後藤はパフォーマンス中に他のメンバーたちとコミュニケーションをとっていたのも印象的だった。メンバー間で息を合わせて一緒に楽しもうとする姿からは、彼の明るいキャラクターが出ているようにも感じた。自分をカッコよく見せることと、ステージ自体を楽しむということの2つのバランスが非常に上手くとれているメンバーだ。
バランスと言えば、池﨑理人の自分を魅せる力についても触れておきたい。池﨑はコンセプトに染まると言うよりかは、コンセプトと自分らしさの間でうまくバランスを取るタイプだ。20歳とまだ若い年齢であるにもかかわらず、声色やビジュアルにかなり重厚感がある池﨑。この曲では、いたずらな笑顔を見せつつも、ときおりセクシーな表情を浮かべる姿が印象的だった。
ボーカルについては、やはり髙塚の高音に惹かれてしまう。どうしたらここまで安定した声が出せるのかと不思議なくらい、彼は圧倒的な声量をほこっている。おそらく、その裏には髙塚のたゆまぬ努力が隠れているのだろう。どの楽曲においても、彼は高難易度の高音パートを担当している。それらのパートを1つ1つしっかりとこなしていく姿を見て、彼の底力と今後の成長に対するワクワクが止まらなかった。
この曲のボーカル面でもう1人印象的だったのが、尾崎匠海だ。彼は声量がかなり増したように思う。声に安定感があり、勢いがある。とくにそれを感じたのは、2サビ前後の彼のパート。突き上げるような伸びやかな歌声が響いた瞬間、彼の声に独特の力強さと勢いがあることに気がついた。INIはさまざまな声色のメンバーが集まっている点も魅力の1つだと思うが、尾崎は中高音のパワフルな声色がとてもカッコいい。今回のパートは、サビに向かって盛り上がっていくテンションを、彼の声がみごとに表現していたと思う。
We Are
前の3曲とは打って変わり、明るく愛らしい顔を見せた『We Are』。こちらは11人のフレッシュな魅力が楽しめるパフォーマンスだ。
この曲では、佐野雄大の姿に目を奪われた。ニコニコと笑いながらパフォーマンスするその姿は、まさに天性のアイドル。彼が本来持っているキュートな魅力とこの曲との相性がとても良いのか、彼のすてきな笑顔がより一層キラキラと輝きを放っていた。
今回のステージで彼の成長を感じた部分は、表情管理に余裕ができたところ。3曲ものダンスナンバーを踊り、『We Are』を踊るころには、体力的に相当キツかったはず。しかし、終始天使のような笑顔を浮かべる佐野の姿を見て、彼の成長とプロアイドル根性を知った。
INIの安定感
INIのステージの特徴は、安定感があることだろう。ファンを魅了したいという熱い気持ちに伴う実力を持っていることが、彼らの強みだ。ライブでの情熱やエネルギーは、ときとして空回りを生んでしまうこともある。しかし、彼らにはそれがない。ステージを掌握しようとする強い思いと同じくらい、冷静さも持っているのだ。勢いがありながらも、決してぶれはしない。その安定感はベテラン級と言えるレベルだろう。
この安定感に関しては、木村征哉の力がかなり影響しているように思える。彼のパフォーマンスは良い意味で“一定”だ。ステージの最初から最後まで、木村は同じ勢いとテンションを保ったままでパフォーマンスを披露していた。
彼はとくにダンス面において影響力が強い人物だ。センターパートに来る時間が長く、グループの顔ともいえる木村。そんな重要な役割を担っている彼が安定感のあるパフォーマンスを見せることによって、グループ全体のパフォーマンスの質がグッと上がっている。
木村と同じくらいグループに大きな影響を与えているメンバーが田島将吾だ。田島は自分のパートを生かすのが非常に得意なタイプ。彼は自分らしさを出すことによって全体のパフォーマンスにアクセントを加えている人物だ。『Rocketeer』の2サビ部分がわかりやすいだろうか。彼はセンターに来たとき、ここぞとばかりに自分らしさを爆発させる。彼が観客の関心を一気に引き寄せることよってパフォーマンスに緩急が生まれ、見ている側をワクワクさせる。
全体の軸となることでパフォーマンスを支える木村と、アクセントになることでパフォーマンスに刺激を加える田島。この2人の存在が、スタイリッシュさと中毒性を兼ね備えたINIの安定したパフォーマンスを形作っているのだろう。
Growl – EXO
さきほど「INIはステージを掌握しようとする強い思いと同じくらい、冷静さも持っている」と書いたが、今回のカバーステージには彼らの“冷静さ”がよく表れていたと思う。今回、彼らがカバーしたEXOとBTOBは、高度なダンス・ボーカルスキルを必要とする楽曲が多い実力派グループ。そんな2組のカバーをそつなくこなせるのはINIメンバーに安定した実力があるからこそだと言える。
日本でも非常に有名なEXOの『Growl』。この歌の醍醐味はサビのユニークな振り付けだろう。この部分のそろい具合には本当に驚いた。INIのパフォーマンスはオリジナルに忠実なスタイル。丁寧に振り付けをこなす彼らの姿からはオリジナルへのリスペクトが感じられた。
この楽曲は激しすぎない曲調が特徴でもあるのだが、彼らはこの“温度感”もうまくつかんでいたように思う。会場を盛り上げながらもどこか理性的な彼らのダンスは、本家EXOのパフォーマンスを彷彿とさせたのではないだろうか。
EXO 엑소 ‘으르렁 (Growl)’ MV (Korean Ver.)
Missing You – BTOB
BTOBの代表曲の1つである『Missing You』。この歌は非常にレベルの高い楽曲だ。BTOBはK-POPアイドルの中でも随一の歌唱力をほこるグループ。彼らの楽曲をカバーするということだけでも、拍手を送りたいくらいだ。
そんな中、このパフォーマンスで圧倒的な存在感を見せたのがメインボーカルである藤牧京介だ。藤牧の歌声は本当に美しい。とくにバラードでは、彼の感情のこもったボーカルがひときわ輝く。繊細さと力強さを兼ね備えている彼の歌声だが、この歌のラスト「クリウォハダ クリウォハダ(그리워하다 그리워하다)」ではそんな彼の魅力が最大限に生きていた。
最初の「クリウォハダ」では儚げな優しい声で歌い、美しい高音を披露。最後の「クリウォハダ」では力強く伸びのある声で曲の切なさを見事に表現した。彼が歌い終えたあと、そのあまりの美しさに会場ではざわめきが起きていた。
また、この曲では許豊凡の透き通るような歌声にも魅了された。この歌で冒頭を担当している許。彼はこの楽曲にどのような思いが込められているのか、どのようなコンセプトのもと作られた楽曲であるのかという部分について深く理解しているように思えた。
『Missing You』の歌詞には、別れた相手のことを忘れられない切実な思いがつづられている。許の歌声や歌い方にはこの“切実さ”が強く出ていたと思う。冒頭の彼の歌声は、まるでこの曲が彼のオリジナル曲なのではないかと思えるほど、曲になじんでいる。『Missing You』の感情をうまくつかみ、歌い上げる彼の姿からは音楽に真摯に向き合うアーティスト精神を感じた。
BTOB(비투비) – ‘Missing You Official Music Video
圧巻のパフォーマンスで会場を盛り上げたINI。新人らしからぬ安定した彼らのパフォーマンスに、観客も魅了されたのではないだろうか。すでに高い実力を持っている彼らのさらなる成長が楽しみだ。